人的資本経営の情報開示とは?日本での動向や義務化、開示の7分野19項目を解説

経営における人的資本が注目を集めており、経営戦略と連動した人材戦略を検討する企業が増えています。さらに、2023年3月期決算からは人的資本開示の一部義務化が決まっており、今後も一層広まっていくことが予想されています。

この記事では、人的資本の情報開示が求められる背景、人的資本を開示する際のポイントや注意点を解説します。人的資本可視化指針で定められた7分野19項目についてもまとめているので、ぜひ参考にしてください。

人材活用に関するお役立ち情報をお送りいたします。

人的資本とは

まずは、人的資本の定義や人的資源との違い、人的資本経営が重視される理由について見ていきましょう。

人的資本は従業員の能力

人的資本とは、人の能力をモノやカネと同じように資本として捉える概念です。ヒューマンキャピタル(HC)と表されることもあり、イギリスの経済学者アダム・スミスの『国富論』でも論じられています。

概念自体は昔からありますが、企業価値の要素がモノやカネなどの有形資産から、人的資本や知的財産を含む無形資産にシフトしていることから、近年世界的に注目度が高まっています。人的資本の具体的な例としては、個人の能力や才能、技能、資質、意欲などが挙げられます。

人的資源と人的資本の違い

人的資源は人を資源として捉え、効率的な消費を目指す考え方です。人的資本にかかる費用は投資と考えますが、人的資源にかかる費用はコストとしてみなされます。従来は、モノやカネと同様に人材も消費していくものだと考えられていましたが、現在は投資をして育てていくものという認識が広がっています。

人的資本経営とは何か

経済産業省では、人的資本経営について「人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方」と定義しています。人的資本経営では人材を資本と捉え、重点的な投資対象とします。人的資本への投資は非経済的なメリットをもたらした後、経済的メリットにつながると考えられています。

人的資本経営における情報開示とは

人的資本の情報開示とは、人的資本に関わる情報について、データや指標を用いて企業が公開することを指します。例えば、有価証券を発行している企業の場合、有価証券報告書に人的資本に関する一部の情報を記載することが義務付けられました。近年では、人的資本の情報開示に注目が集まり、企業に対して求められています。

関連サービス

人的資本経営支援(ISO30414)

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人的資本の情報開示が求められる背景

人的資本の情報開示が求められる背景として、4つの理由を解説します。

人的資本の価値の高まり

前述したように、人的資本への関心が高まっており、情報開示への積極的な姿勢が求められています。人的資本に積極的な経営は企業価値向上に直結するものとして、投資家が投資を検討する大きな判断基準にもなっています。特に、海外投資家は人的資本をはじめとする、非財務情報を高く評価する傾向があるため、日本においても対策を講じる企業が増えています。

世界的な流れ

欧州では従業員についての情報開示や、企業サステナビリティ報告指令などが義務化・義務化予定となっています。米国でも上場企業は人的資本の開示が義務付けられています。欧米の流れを受けて、日本でも情報開示が求められるようになり、法整備が進んでいます。

ISO30414の公開

ISO30414とは、人的資本についての国際的なガイドラインです。ISO(国際標準化機構)によって定められた規格の1つで、企業の持続可能性のサポートや経営における透明性の向上を目的としています。ISO30414には、次の11項目が記されています。

コンプライアンスと倫理 コンプライアンス違反数
コンプライアンス・倫理研修の実績
コスト 人件費
採用・離職に関するコスト
ダイバーシティ 年齢・性別の割合
障がい者雇用比率
リーダーシップ 管理職への信頼度
リーダーシップ研修の実績
組織文化 従業員満足度
従業員エンゲージメント
組織の健康・安全・福祉 労働災害発生件数
健康に関する研修の実績
生産性 従業員1人あたりの生産性
人的資本ROI
採用・異動・離職 採用プロセス
離職率・平均勤続年数
スキルと能力 研修への参加率
従業員1人あたりの研修時間
後継者育成計画 後継者の準備率
内部継承率
労働力 従業員数
外部労働力

ESG投資への注目

ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字をとった言葉です。ESG投資とは環境問題や社会問題、企業統治に対する企業のスタンスから投資先を決める方法で、近年増加傾向にあります。

人的資本の情報を開示するメリット

人的資本の情報を開示する大きなメリットとして、ステークホルダーから高い評価を得られる点が挙げられます。また、人材を消費するのではなく、人材に投資する考え方が定着すると、従業員エンゲージメントの向上も期待できます。人的資本の情報を開示し、人材育成の取り組みが認められると、採用活動における競争優位性も高まります。

日本での人的資本にまつわる動向

日本での人的資本にまつわる動向について解説します。

人材版伊藤レポートの発表

人材版伊藤レポートとは、経済産業省が2020年9月に公表した人的資本に関する報告書です。一橋大学名誉教授である伊藤邦雄氏が座長を務めた「持続的な企業価値向上と人的資本に関する研究会」に基づいて作成されました。

人材版伊藤レポートには、企業が人的資本経営を導入するにあたって、必要となる視点や要素や参考になる事例などが盛り込まれています。2022年5月には内容を深掘りしたものとして、人材版伊藤レポート2.0も発表されています。

人的資本の開示が義務化

日本国内でも、人的資本の開示が一部義務化されることが決まりました。2023年3月期決算以降は、有価証券報告書を発行する大手企業約4,000社に対して、有価証券報告書上での人的資本の情報開示が要求されます。対象となるのは、従業員満足度や人材への投資額などの情報です。

経済産業省や内閣官房の動向

2021年に6月には、経済産業省による「非財務情報の開示指針研究会」、2022年2月には内閣官房による「非財務情報可視化研究会」が開始されました。2022年8月には、上場企業向けの人的資本開示ガイドラインとして「人的資本可視化指針」が公表され、開示事項として7分野19項目が指定されています。

人的資本開示の7分野19項目

前述した「人的資本可視化指針」で定める7分野19項目について解説します。7分野の開示項目は、大きく「価値向上の観点」と「リスクマネジメントの観点」の2つに分類されます。

人材育成

人材育成分野の項目は、「リーダーシップ」「育成」「スキル・経験」の3つです。開示事項の例としては、研修時間・費用・参加率や、人材確保・定着についての取り組みなどが挙げられます。従業員や後継者の育成、教育環境なども人材育成の対象に含まれます。人材育成は「価値向上の観点」に主軸を置いた開示項目です。

多様性(ダイバーシティ)

多様性分野の項目は、「ダイバーシティ」「非差別」「育児休業」の3つで構成されています。開示事項の例には、属性別の従業員と経営層の比率、男女間や正規・非正規の従業員の給与差などがあります。ダイバーシティでは、多様なバックグラウンドを持つ従業員の受け入れ体制について評価されます。

健康・安全

健康・安全分野の項目には、「精神的健康」「身体的健康」「安全」の3つがあります。従業員の欠勤率や労働災害の発生率、ヘルスケアの体制などが開示事項の例として挙げられます。医療やヘルスケアサービスの利用について、どのように促進しているかといった情報開示も求められています。

労働慣行

労働慣行分野の項目は、「労働慣行」「児童労働・強制労働」「賃金の公正性」「福利厚生」「組合との関係」の5つで構成されています。開示事項の例としては、平均時給や最低賃金などが挙げられます。労働関連のコンプライアンス遵守や、待遇の公平性が評価されることから、「リスクマネジメントの観点」に重きを置いた項目です。

エンゲージメント

エンゲージメント分野では、「従業員が待遇や職場環境に満足しているか」「やりがいを感じているか」などの情報を開示します。海外ではエンゲージメントの一環として、経済的な安定を支援する仕組み(ファイナンシャル・ウェルネス)も広がっています。

流動性

流動性分野の項目には、「採用」「維持」「サクセッション」の3つがあります。離職率や採用・離職の費用、定着率、採用にかかる期間などが事例として挙げられます。後継者カバー率や人材確保・定着の取り組みなどの情報開示も求められており、適切に対処できているかが評価されます。

コンプライアンス

コンプライアンス分野では、「法令を遵守した企業活動ができているか」などの情報開示が求められます。開示事項の例には、人権問題の件数やコンプライアンス・人権研修の実施割合、苦情件数、業務停止や法令違反の数などがあります。社会的な規範に則った経営をしているかが評価され、リスクマネジメントの観点には欠かせない項目です。

人的資本を開示する際のポイント

ここからは、効果的な情報開示を行うための3つのポイントを解説します。

開示には戦略的に取り組む

開示する情報は事前に精査しましょう。全てを網羅的に公開するのではなく、ステークホルダーに求められている情報を重点的に取り上げることで、効果的なアピールが可能となります。情報開示や目標に向けた施策については、定期的にブラッシュアップすることも大切です。

データを用いて数値で表す

情報開示ではデータを用いて数値で表すことを心がけます。データを蓄積していくことで、取り組みの有効性を具体的に提示できます。従業員のデータを収集・分析するためのツールを導入するなど、効率化の手段も検討していきましょう。

開示では企業優位性を重視

人的資本を開示する際は企業優位性を重視しましょう。独自の経営戦略や成長計画を盛り込むことで、自社の優位性を示すことができます。また、目標や取り組みにストーリー性を持たせることで、投資家をはじめとするステークホルダーの印象に残りやすくなり、投資を検討する好材料となります。

人的資本の開示に向けた手順

人的資本の情報開示に向けた準備を進める手順は、以下のとおりです。

  • 1.
    データや情報を計測できる環境を整備する
  • 2.
    具体的な目標を設定する
  • 3.
    従業員との対話を交え、施策に取り組む
  • 4.
    投資家からの意見やフィードバックを施策に反映させる

まずは現状把握するために、項目ごとに内容を精査する環境を整えます。収集したデータを分析し、具体的な目標設定も重要です。現状と理想にギャップがある場合は、従業員との対話を通して最適な施策を検討しましょう。投資家からの意見を施策に反映すると、訴求力の高い情報が公開できます。

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AKKODiSでは、経営戦略と連動した人材戦略を叶えるための、人的資本経営を支援しています。ISO30414に準拠したデータ管理の調査や分析により、貴社の企業価値をアピールできる項目を精査します。精査した結果をもとに、情報開示業務や人材戦略を支援します。

人的資本を可視化する、独自の「キャリアマップ」ツールを使い、人事制度改革やHRアセスメント、キャリア開発といったソリューションを提供します。

まとめ

企業価値を多角的な視点から判断するためには、人的資本をはじめとする非財務情報の評価が欠かせません。人的資本を開示する際は、戦略的に取り組み、データを用いて数値で示すことが重要です。ISO30414認証企業のAKKODiSは、人的資本の実情を可視化して、効果的な開示ができるよう支援いたします。

AKKODiSでは情報開示をはじめ、人的資本に関するさまざまなご相談を承っております。「人的資本経営に本格的に取り組みたい」「人事評価制度を見直したい」などの課題に合わせて、最適な施策をISO30414認定コンサルタントがご提案いたします。まずは、お気軽にお問い合わせください。

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