人的資本経営に成功した企業事例5選 | 注目される背景や取り組むメリットなどを解説

人的資本経営が注目を集めています。しかし、具体的な取り組み方がわからない担当者も多いのではないでしょうか。この記事では、人的資本経営の概要に触れつつ、各企業の事例や注目される背景、取り組むメリットなどを解説します。ぜひ参考にしてください。

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人材版伊藤レポート2.0の3P・5Fモデル

経済産業省が公開した人材版伊藤レポート2.0は、人的資本経営の実現に向けて作成されました。レポートでは、企業が人的資本経営を実現する上でポイントとなる、3P・5Fモデルが提唱されています。ここでは、3P・5Fモデルについて解説します。

人的資本経営実現のポイントとなる3つの視点

レポートでは、人的資本経営には以下の3つの視点が欠かせないと記載されています。

  • 経営戦略と連動しているか
  • 目指すべきビジネスモデルや経営戦略と現時点での人材や人材戦略との間のギャップを把握できているか
  • 人材戦略が実行されるプロセスのなかで、組織や個人の行動変容を促し、企業文化として定着しているか

人的資本経営の大前提である人材戦略と経営戦略の連動を成しとげるには、現時点で人材に不足するものを明確にする必要があります。中長期的に企業活動を高めるには、人的資本経営を企業文化の中心に据え、継続して取り組むことも重要です。

人的資本経営につながる施策に求められる5つの要素

レポートでは、人的資本経営には以下の5つの要素が欠かせないと記載されています。

  • 目指すべきビジネスモデルや経営戦略の実現に向けて、多様な個人が活躍する人材ポートフォリオを構築できているか
  • 個々人の多様性が、対話やイノベーション、事業のアウトプット・アウトカムにつながる環境にあるのか
  • 目指すべき将来と現在との間のスキルギャップを埋めていく
  • 多様な個人が主体的、意欲的に取り組めているか
  • 時間や場所にとらわれない働き方

理想の経営ビジョンをかなえるには、人材の多様化や、従業員がお互いを認め合って働ける職場環境が望まれます。知識やスキルを伸ばす人材育成計画を整備し、リモートワークのような時間や場所に縛られない働き方も推進しましょう。

また、5つの要素に加え、経営戦略に応じて具体的なKPIを設定してください。KPIを設定すると、人的資本経営の進捗状況を見える化できます。

人的資本経営コンソーシアムの活動

人的資本経営コンソーシアムは、金融庁や経済産業省が見守る活動です。人的資本経営コンソーシアムは、人的資本経営に関する事例の共有や、企業間の協力や情報開示にかかわる議論を目的に設立されました。公式サイトには人的資本経営の参考となる情報が掲載されているので、取り組みを検討する際は、ぜひお役立てください。

人的資本経営に成功した企業事例5選

各企業が取り組む人的資本経営の事例を一部紹介します。上述した人材版伊藤レポート2.0との関連も考えつつ、参考にしましょう。

東京海上ホールディングス株式会社

東京海上ホールディングス株式会社は、人材の多様化の推進を目的に、2030年に女性管理職比率30%を目指しています。同社は目標達成に向け、女性を対象としたキャリア構築支援策を多数用意しました。計画的にキャリアを構築できる階層別キャリア研修をはじめ、メンター制度や同じ境遇の女性との座談会など、メンタル面のサポートも充実しています。

2023年4月現在、同社の女性管理職の比率は11.2%となりました。2011年の3.6%と比べると、約12年で女性管理職は約3倍に増えています。

旭化成株式会社

旭化成株式会社は、「人財ポートフォリオ」により理想的な経営ビジョンの達成を目指しています。人財ポートフォリオは採用・育成計画に反映され、M&Aやベンチャー企業との連携も駆使して人材獲得に努めています。

また、同社は、事業領域を問わず専門性を強化したい領域を「コア技術領域」と定めました。高度な専門性を持つ人材を人財ポートフォリオで可視化し、計画的に専門性に長けた人材を増やしています。

キリンホールディングス株式会社

キリンホールディングス株式会社は、人材の特徴や強みを生かして、ヘルスサイエンスやICTなどの新事業に取り組むと決断しました。経営戦略にもとづき、専門的な知識・経験を持つ人材のキャリア採用を推進したことで、新事業への参入に成功しています。

同社は人的資本経営に関わる情報開示として、キャリア採用率や女性経営職率などを公開しています。なお、以降は人材育成や流動性、ダイバーシティについても情報開示を強化する見込みです。

KDDI株式会社

KDDI株式会社は、新入社員のエンゲージメント向上のため、コース別の採用(WILLコース)や、通年採用を導入しました。

コース別の採用では、初期配属領域が確約されており、ネットワークインフラエンジニアやソリューションエンジニアなど、複数の候補から働きたい配属先を選べます。2021年度から始まった通年採用では、学生の就学状況に応じて柔軟に対応できます。

株式会社LIXIL

株式会社LIXILは、従業員の主体的なキャリア形成を目的に、社内公募制度の「Job Posting」や、社外における副業制度を導入しました。Job Postingでは、部門の垣根を越えて従業員がやりたいことにチャレンジできます。

また、社外で副業に取り組むと、自社で得られないスキルや体験を通じて、人材の多様化が進むと考えられます。

人的資本経営の背景にある世間の動き

企業情報開示義務の改正と、働き方の多様化に向けた動きに触れつつ、人的資本経営を進める背景を解説します。

企業情報開示義務の改正

企業情報開示義務の改正は、人的資本経営が注目される理由の1つです。企業情報開示義務とは、指定された情報を有価証券報告書で開示することです。企業情報開示義務の改正により、事業年度が2023年3月31日以後に終了する全ての上場企業について、人的資本経営に関わる情報開示義務が発生しました。

情報開示により自社の人的資本経営への方向性を明確にできると、資本家にアピールでき、活動資金を得やすくなります。また、後ほど詳しく解説しますが、求職者の獲得に向けても情報開示はチャンスといえます。

働き方の多様化

働き方の多様化も、人的資本経営を浸透させました。ワーケーションやリモートワークなど、近年はさまざまな働き方が実現しています。働き方の選択肢が増えるにつれ、従業員の仕事に対する意識も多様化しました。従業員とのかかわり方や育成方法を見直す企業が増えた結果、人的資本経営が注目を集めています。

人的資本経営が企業にもたらすメリット

人的資本経営の取り組みは、人材育成による企業力向上や、人材および投資や融資の獲得につながります。

従業員のモチベーション・企業力が高まる

人的資本経営に取り組みことで、従業員のモチベーションが上がり、企業力が高まります。従業員のモチベーションの高さは、企業の生産力に影響し、高い利益を上げることにつながります。仕事への意欲の高い従業員の存在と継続的な利益向上により、社会からの信頼性と高い競争力の獲得が可能となり、企業の魅力・価値が高まることとなります。

人材を獲得できる

人材獲得の観点からも、人的資本経営はメリットがあるといえます。人的資本経営に力を注ぐと、従業員にとって働きやすく、スキルを伸ばしやすい職場環境が形成されます。

例えば、「残業してでも研修の時間を確保させる」といった従業員の都合を無視した人材育成は、人材資本経営では採用されません。従業員を尊重し、育成に力を入れる企業には、自然に人材が集まると考えられます。

投資や融資の対象となる

上述したとおり、人的資本経営にかかわる情報開示が義務付けられています。自社の人的資本経営が世間に評価されると、投資や融資を受けやすくなります。

人的資本経営を実現する施策・戦略

人材版伊藤レポート2.0の「5つの共通要素」にもとづき、人的資本経営を実現するための取り組みを紹介します。

人材ポートフォリオを構築する

理想の経営戦略ビジョンをかなえるには、中期的な人材ポートフォリオを作成する必要があります。人材ポートフォリオは、雇用する従業員の構成を明確にしたものです。

人材ポートフォリオを見ると、職種・スキル・特性などの要素別に、該当する従業員の人数や勤続年数がわかります。人材ポートフォリオで人的資本情報を整理・可視化し、研修計画の立案や、仕事の割り振りに役立てましょう。

イノベーション創出に向け人材の多様化を促進させる

同じような価値観、スキル、経験を持つ従業員ばかりを雇用していては、イノベーションが生まれにくくなってしまいます。人材の多様化を図る企業には、採用活動を見直したり、ダイバーシティ研修を採用したりするところもあります。

理想の経営戦略ビジョンをかなえる人材を育成する

あらかじめ作成しておいた人材ポートフォリオをもとに、現時点で人材が持つスキルを把握しましょう。理想の経営ビジョンとのギャップを考えると、育むべき知識・スキルがわかります。eラーニングの活用、研修制度の充実、社内起業・出向起業の支援などを活用すると、従業員の知識とスキルを育てられます。

従業員エンゲージメントを高める

同じ企業で働いていても、個々の従業員の雇用に関する考え方や価値観はそれぞれ異なります。従業員の個性を受け入れつつ、健康経営や福利厚生の充実などに取り組み、従業員エンゲージメントを高めましょう。

健康経営とは、従業員やその家族の健康に配慮し、改善を働きかけることです。健康経営に取り組むと従業員にとって働きやすい環境が構築されます。健康経営への取り組みには、健康診断の受診率向上や、ストレスチェックの実施、健康促進に向けたセミナーの開催などが挙げられます。

時間や場所に縛られない働き方を推奨する

ワークライフバランスを保てる働き方は、従業員のモチベーションを向上させ、人的資本経営の効果を高めます。例えば、リモートワークは、ワークライフバランスを保ちやすい働き方といえます。

コロナウイルス感染症の蔓延により、リモートワークを取り入れる企業が増えました。リモートワークを円滑に導入するためには、業務のデジタル化を推進するとともに、人事制度や社内ルールなどの見直しも実施しましょう。

人的資本経営は継続支援が可能なAKKODiSへ

人的資本経営は、一部企業で情報開示の義務化が始まり、今後も経営において重要視される考え方の1つです。変化の激しい時代において、企業の在り方や従業員の在り方は変わっています。企業側からの戦略にもとづく適切な働きかけを行うことで、企業価値向上につながっていきます。

人的資本経営を取り入れていくには、経験豊富なAKKODiSの支援を活用することで、効率的かつ、継続的に効果を発揮する経営が可能となります。AKKODiSでは、形式上のデータ開示にとどまらない、「真の人的資本経営」をサポートしています。一時的な支援ではなく、企業価値が正しく向上するよう、継続的なサポートを提供しています。

まとめ

人的資本経営の背景には、企業情報開示義務の改正や働き方の多様化があります。人的資本経営は、企業に大きなメリットをもたらします。今回紹介した企業の事例を参考に、人的資本経営への取り組みを検討してみましょう。

AKKODiSコンサルティング株式会社は、人的資本経営をサポートするコンサルティングサービスです。ISO30414認定コンサルタントが多数所属しています。継続的にお客さまの企業価値を向上させるために、現状調査・把握、ギャップ分析・情報開示、経営・人材戦略コンサルティングを繰り返します。人的資本経営についてお考えであれば、ぜひ、AKKODiSコンサルティング株式会社にご相談ください。

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