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福島県矢祭町:町全体のDXを推進し独自の「子どもICTアドバイザー」制度を実現

福島県矢祭町:町全体のDXを推進し独自の「子どもICTアドバイザー」制度を実現

クライアント

福島県矢祭町役場

担当部署

自立総務課

業界

行政

支援内容

「子どもICTアドバイザー認定プロジェクト」を開始

プロジェクト概要

福島県矢祭町は県最南端に位置する人口5,600人程の自然豊かな小さな町です。矢祭町とAKKODiSコンサルティングは、2020年からGIGAスクール構想に取り組み、デジタル人材の育成やデジタルサービスによる利便性の向上と業務の効率化に取り組んできました。
矢祭町に地域活性化起業人として着任したAKKODiSコンサルティングのエンジニアが、2023年に「子どもICTアドバイザー認定プロジェクト」の実現を支援。中学生がデジタルスキルを活用し、町の困りごとを解消するさまざまな取り組みを始めています。プロジェクト実現に向けてどのような活動を行ってきたのか、矢祭町役場の自立総務課長 鈴木直人さまと自立総務課 企画財政グループ主任主事の海野拓椰さまにお話を伺いました。

抱えていた課題

自治体DXを推進できる人材が不在

—矢祭町が、AKKODiSと取り組みを行う前に抱えていた課題はどのようなものだったのでしょうか?

海野さま:総務省が2022年に「自治体DXの推進別ウィンドウで開く」 を掲げました。

ただ、役場にはDXに明るい職員がいない上、どこから手をつけていけばいいのかもわからない状態でした。鈴木課長と一緒にDX関連のセミナーに出席するなど、いろいろと情報を集めていましたが、DXに関する施策については全然まとまらないという感じになっていました。

鈴木さま:矢祭町は2003年の「合併しない宣言別ウィンドウで開く」以降、財政改革で職員数をかなり削減してきました。以降、県や国からの業務移管が増えているにもかかわらず、職員を増やさずやってきたものですから、デジタルを活用して業務の効率化をしなければ立ちいかなくなるということは、2~3年前から話していました。

—AKKODiSに自治体DXについて依頼した経緯を教えてください。

海野さま:2020年から矢祭町はAKKODiSと包括連携協定を結んでいました。その関係で、教育委員会のGIGAスクール構想が発表されたときに、総務省の地域活性化起業人制度別ウィンドウで開くを利用して、2021年からAKKODiSの方に着任していただきました。

起業人制度では1企業から2名まで契約することができるので、先任の方に加えて、2022年から自治体DXの推進担当ということで田中さんに着任していただきました。

※地域活性化起業人制度とは、地方公共団体が三大都市圏に所在する民間企業の社員を一定期間受け入れる総務省の制度。地域独自の魅力や価値の向上等につながる業務に従事してもらい、地域活性化を図る。

矢祭町役場
鈴木直人さま
矢祭町役場 自立総務課長

AKKODiSの取り組み

「子どもICTアドバイザー」制度を立案

—着任されてからどのような活動を行ったのでしょうか?

AKKODiS田中:自治体DXという名目で着任し、幼稚園小学校中学校の欠席連絡フォームを作るなど、まずはデジタルに触れる機会作りに着手しました。しかし、DXというのはあくまで手段でしかありません。そこで、本質的な「なぜDXをしたいのか」について職員の方にアンケートをしました。

そのアンケート結果を分析した結果、課長職以上のビジョンをまとめると、住民の交流を増やして、かつ矢祭町の魅力を発信したいという目的が浮かび上がってきました。

もちろん、DXによる職員の方々の業務効率やデジタルリテラシーの向上というところは現在も並行して行っていますが、それだけでは町の魅力発信や住民の交流につながりません。

そこで、矢祭町の方に町の魅力を伺うなかで、矢祭町では伝統的に地域活動を子ども中心に取り組んできたことがわかりました。

海野さま:矢祭町では、小学生が友人や家族に読書のすばらしさを伝える「子ども司書」という制度や、幼年期に正しい火の取り扱いを学ぶ「幼年消防クラブ」といった活動が活発に行われています。

AKKODiS田中:矢祭町の子どもが地域で役割を持つ文化にデジタルを関連付けて、「子どもICTアドバイザー」というアイデアが浮かびました。

—「子どもICTアドバイザー」とはどういう取り組みなのでしょうか?

海野さま:デジタル関連の知識をまず子どもたちに教えて、その子どもたちが町の高齢者などに教えるというものです。矢祭中学校の「特設デジタル部」に入部した生徒が対象です。

自治体DXを推進して、役場の手続きなどがデジタル化されたとしても、町民の方々が使い方を知らなければ活用されません。であれば、町民の方々に誰かが教える環境を整える必要があることがアイデアの最初でした。

矢祭町の中学校では、子ども司書の一環として特設部として「特設としょ部 」を設立した経緯があり、「子どもICTアドバイザー」も中学校の特設部として始めることになりました。

鈴木さま:子どもたちが地域のなかでデジタル化を進めてくれるという立場になれば、行政のDXにも寄与するのではと思っています。たとえば、高齢者の方々に対して、私たちからインターネットから手続きしてくださいねと言われるより、お孫さん世代に教わることで自然とデジタルに親しんでもらおうという狙いがあります。

福島県矢祭町
海野拓椰さま
矢祭町役場 自立総務課 企画財政グループ主任主事

プロジェクトの成果

中学生の特設デジタル部活動として開始

—特設デジタル部ではどのような活動を行っているのでしょうか?

海野さま:当初の計画では、特設デジタル部の部員たちに情報モラルと倫理、セキュリティについての知識を学んでもらい、その後、スマートフォンの使い方、LINEアプリの使い方などを学び、町民の方々に教える立場、アドバイザーとして活動するというものでした。

AKKODiS田中:情報モラルと倫理、セキュリティについての講義を行う予定です。実は、その後すぐに矢祭町で高齢者向けのスマホの使い方講座が開催されます。特設デジタル部の部員たちは、そこでサポーターという形で参加してもらう予定になっていますので、 それまでには最低限必要な知識を身につけられるようにスケジュールを調整しています。

限られた予算で地域の伝統文化を生かしたプロジェクトに

—子どもICTアドバイザーの取り組みは、福島民報社の一面でも紹介されましたね。

海野さま:2023年9月に子どもICTアドバイザー開始を発表したのですが、そのときに取材を受けたものが掲載されました。

AKKODiS田中:うれしかったですね。矢祭町のビジョンとして、住民の交流を増やす、魅力を発信するという部分で貢献できたのではと思っています。

海野さま:その後も、町役場にメディアから取材の依頼や、大学の生協からコラボレーションをしたいという話が来ています。

AKKODiS田中:子どもICTアドバイザーの取り組みは、力のある自治体に先を越されてしまうかもしれない。私はどうしても、「矢祭町が初」のことをやりたかったのです。

海野さま:子どもたちがデジタル技術を活用して地域に貢献する類似の取り組みは、Google と提携した自治体が「ジュニアICTリーダー」の育成として行っています。

しかし、矢祭町はAKKODiSの伴走で地域文化に適した独自のプログラムを開発しました。地域活性化起業人の年間負担金の範囲で実現できたことは、予算が少ない規模の小さい自治体にとって良いモデルケースになったのではないかと思います。

鈴木さま:情報公開後は、周辺地域の自治体からも問い合わせがありました。

—子どもICTアドバイザーに子どもたちが興味を持ってくれて、今後もデジタル部の部員が増えていくといいですね。

海野さま:矢祭町の中学校では情報の専門教師がいないため、技術・家庭科の先生が教えています。そうすると、高校に入ったときに他の子どもたちとの知識レベルの差がでてしまう恐れがあります。

特設デジタル部 が設立されたことで、矢祭の子どもたちが高度な知識を得て高校に進学してもらえるようになるといいなと思います。

矢祭町役場
田中勇介
福島県矢祭町 地域活性化起業人
AKKODiSコンサルティング デジタルテクノロジー推進部

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