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菅生学園初等学校:プログラミング授業の運用体制とカリキュラムを共同開発。内製化に向けた取り組みも進む

菅生学園初等学校:プログラミング授業の運用体制とカリキュラムを共同開発。内製化に向けた取り組みも進む

クライアント

菅生学園初等学校

担当部署

情報管理室

業界

教育

支援内容

教員向けプログラミング教育研修
小学生向けプログラミング授業

プロジェクト概要

菅生学園初等学校は東海大学の系列校であり、小学校・中学校・高等学校を有する西多摩地域唯一の総合学園です。2020年に小学校必修となったプログラミング授業に対応するため、AKKODiSと企業提携を開始。同校が持っている効果的な授業の進め方といったノウハウと、AKKODiSが持つプログラミングに関する知識とスキルを年3回の授業に落とし込むことに成功しました。この菅生学園初等学校のプログラミング教育の構築、内製化に向けた仕組み作りはどのような過程で進められたのでしょうか? 同校の情報管理室室長である下野祐輔先生に伺いました。

抱えていた課題

プログラミングを理解している教員がいなかった

—2020年から小学生のプログラミング教育が必修化されました。それに向けて御校ではどのような取り組みを行っていたのでしょうか。

当校では2017年頃より、プログラミング教育の必修化に向けて取り組みを開始しましたが、当時は私も含めた教員のほとんどがプログラミングというものを理解しておらず、どうしていいかわからないという状態でした。現在は私がICT担当をしていますが、専門教科は音楽です。

—音楽の先生がICT担当というのは珍しいですね。

正直、担当になる前まではパソコンにもそれほど詳しいわけではありませんでした。ただ、学内で情報管理を担当していた関係で、ICT推進部を担当することになりました。

—御校におけるプログラミング教育に対する考え方を教えてください。

そもそも、文部科学省が求めているプログラミング教育というのは、各教科指導のなかでプログラミング的な活動や思考を通して教科の学びを深めていくというものだと思います。なので、スクラッチやmBotを使ってプログラミングそのものを学ぶというのは、本来はあくまでもオプションだと思っています。

つまり、各教科内で論理的思考を身につけるためのカリキュラムにプログラミング的活動を組み入れた授業に取り組む必要があると考えています。一方で本校の初等学校から高等学校までの一貫教育を考えた時に、初等学校段階としてプログラミング学習を通して現代社会のIoT技術を理解したり、SDGsに取り組むツールとしてプログラミングを扱えるようになる力をつけたりすることも必要なことだと考えています。ですが、まだまだ校内での理解度が進んでいないというのが現状です。

※小学生からプログラミングを学ぶことができるロボット教材

菅生学園初等学校
下野祐輔先生
菅生学園初等学校 情報管理室長

AKKODiSの取り組み

まずは教員研修からスタート

—AKKODiSとの関わりはどのように始まったのでしょうか?

2017年にプログラミング教育を行っていこうというタイミングで、AKKODiS(当時は前身のVSN)が小学生向けのプログラミングの授業を行っているということを知りました。我々が何もわからないまま生徒に授業をするよりも、まずはプロにお任せしたほうがいいのではないかと思ったのがきっかけです。

生徒たちへの授業の前に、まずは教員研修からやっていただきました。そのなかで、そもそもプログラミングというものはパソコンを使ってプログラミング言語を入力して何かを作るというものではなく、論理的思考が必要になるということを学びました。

例えば、小学1年生向けのプログラミング授業では、ひとつの場所に行き着くためにどんな方法があるかな? というものや、グループ内で決められた枚数のカードを使って物語を作ってみようという、論理的思考の基礎を身につけるということを、まずは職員が知る必要があったのです。

職員研修を経て、生徒たちへの授業を開始しました。授業は年に3回。当校は各学年1クラスと小規模なので、初年度は1~2年生、3~4年生、5~6年生の3クラスに分けた授業になりました。この授業は現在も継続していまして、今は学年ごとに年3回の授業を行っています。

初年度の授業はスクラッチを使い、学年別に課題を設定して、それに取り組んでいくものです。論理的思考を育むというよりは、プログラミングというものに親しむことに主眼を置いた授業でした。

その授業を通じて、プログラミングへの興味を持って自分でやりたいという生徒もいましたが、一方で授業以外ではまったく触らないという生徒もいました。

本校は、自然に触れて環境問題の意識を育む「ゆたかの時間」、実践的な英会話を学びインプットとアウトプットを重視した「国際理解教育(英語)」、そして論理的思考を育む「プログラミング授業」を教育の3つの柱としています。

しかし当時のプログラミングの授業では、「プログラミング教育に力を入れています」というには内容が乏しいという思いがありました。

教育者の視点とプログラミング実務を生かし授業の質が向上

—初年度のプログラミング授業を終えて、継続的にAKKODiSと契約するわけですが、決め手は何だったのでしょうか?

当校としてはプログラミング授業を続けていきたい。でもまだ自分たちだけでは生徒の学びを後押しできなかったのが一番大きな要因です。また、AKKODiSの講師の方の授業では、生徒の意見を広げ、疑問に対して的確なアドバイスをしてくれたことで、児童のプログラミング理解力が向上していきました。この結果から、継続的にやってもらおうという判断になりました。

—それから毎年、年3回のプログラミング授業をAKKODiSの講師が行い、2021年に企業提携という形になり、継続的にAKKODiSが御校のプログラミング授業を本格的に行うことになりました。

企業提携を結ぶ前は、ほとんどAKKODiSさんにお任せしている状態でした。企業提携後は、我々(学校)が持っている効果的な授業の進め方といったノウハウと、AKKODiSが持っているプログラミングに関する知識とスキルを、年3回の授業に落とし込むために、各授業の前後にオンラインでやりとりをさせていただいて、授業の進め方についてディスカッションをしています。

具体的には、こちらから「もうちょっと発表の時間を取ったほうがよかった」とか、「ここの課題設定が飛躍しすぎていて生徒たちが戸惑っていたようです」ということをAKKODiSの講師にお伝えすることで、授業の質を高めていく作業を行っているという感じです。

この作業を行うことで、明らかに授業の質も向上しましたし、AKKODiSの講師の方も手応えがあったということで、お互い良い状態になっています。

例えば、AKKODiSとの打ち合わせで、「エンジニアは一人でプログラミングをするよりもチームで作業をすることが多い」という話が出てきました。確かに、実社会では一人で黙々と仕事をするだけではなく、チームで仕事をする機会のほうが多いはずです。

「チームで役割分担を明確にし、完成までの道筋をたてて作業をしていくチームプログラミングには練習が必要」という講師の言葉を受けて、4年生の授業では二人一組のペアプログラミングを行いました。スクラッチを使いゲームを作るという課題でしたが、それぞれがプログラム担当とデザイン担当のように役割を決めて進めたり、プログラミングについて二人で話し合いながら進めたりなど、課題解決のための方法や役割分担についてチームで考えさせるようにしました。

このように、プログラミング学習の中で主体的学びの場面だけではなく対話的学びの経験値を積むことも必要なのではないかというアイデアをいただくことができました。どの学年でどのような授業を展開するのがより効果的か、AKKODiSと密に話し合って授業内容を決めているので、良い関係になっているなと感じています。

教員全員が生徒とプログラミングの話ができることが理想

—一緒に授業を作っているのですね。

そうです。それまでは、年に3回のイベントという感じでしたが、今は1年を通しての授業になっています。現在は、3回の授業の間に、学校側で何をすればいいのかを話し合い、次回の授業までにやることを決めて、校内でクリアするようにしています。

1回の授業は2時間ですが、その2時間内で設定した課題をクリアできる生徒もいれば、できない児童もいます。以前なら、その授業内でできなかったことはそのまま放置している児童が多かったのですが、現在は次のプログラミングの授業までに学校内で終わらせておくようにしています。

—そのためには、先生方もある程度プログラミングについて知っておかなければいけませんね。

現在は、すべての職員がプログラミングを理解しているわけではありません。最終的にはすべての教員がプログラミングをある程度理解して、生徒たちとやり取りができるようになればいいなと思っています。

その辺りも、AKKODiSにアドバイスをいただくことで、徐々に体制を整えつつあります。オンラインでのディスカッションも、設定した時間を超えて続くことも多く、熱心に関わっていただけていると思います。

プロジェクトの成果

プログラミング教育の目標設定が明確になった

—2021年から本格的にAKKODiSと企業提携をして、御校のプログラミング教育はどのように変化したと思われますか?

小学校6年間のプログラミング教育の目標設定が明確になったというところです

当校は小中高の12年間一貫教育を行っていますが、中等部3年間のプログラミング授業では、データ分析の力を身につけるカリキュラムが組まれています。

そこで小学校6年間のプログラミング教育のゴールとして、IoTなどの社会生活の仕組みに関わる学習を掲げています。

現代社会のなかで、プログラミングというのは生活のなかでどのように使われているのかを広く知ること、そしてその仕組みを体験的に理解することを設定しました。最終的には、「ゆたかの時間」(自然環境学習)を通して学んでいるSDGsに取り組む上でプログラミングを使いどのようなことが実現できるのかを企画実践するということを目標に、6年間のカリキュラムを進行しています。

—プログラミングそのものを学ぶというよりは、プログラミングという技術を使って何ができるのかを学ぶという方向のように感じます。

プログラムはひとつのツールだと思います。それを使って何をやるのかというのは、学校ごとにカラーが異なるのではないでしょうか。当校では、プログラミングを使って論理的コミュニケーションを育む力や、IoTについて理解を深めるということを進めていこうとしています。

菅生学園初等学校
専門教科の音楽においても、プログラミングの仕組みを活用した授業にも取り組む

プログラミング教育の内製化に向けてAKKODiSと協力

—そのために、これから学校側としてクリアしていかなければならない課題は何でしょうか?

まずは、AKKODiSで行っているプログラミング授業だけではなく、各教科内でプログラミングを活用していくことです。

現在は、各教員に各学年教科のどこにプログラミングが使えそうかというアイデアを出してもらい、それを「プログラミングICT教育計画」というものに落とし込んでいます。

最終的には、AKKODiSが現在行っているプログラミングの授業を、我々教員だけでできるように内製化することが目標です。そのためには、各教員がプログラミングに対しての知識と理解を深めていく必要があります。

現在の私のプログラミング教育の知識も、ほとんどがAKKODiSとの話し合いのなかで得たものばかりです。まだまだ私どもだけでは知識もスキルも足りませんので、これからもAKKODiSと協力しながら、理想のプログラミング教育を目指していきたいと思います。

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