「世界をより良くしたい」。
Z世代のサステナブル経営責任者が目指すSDGsの実装と浸透。

 

#SDGs #サステナブル経営 #自分ごと化 #未来を創る

「Making the future work for everyone」。これはAdecco Group世界共通のパーパスです。そして、AKKODiSコンサルティング(以下AKKODiS)を含むAdecco Group Japanでは「『人財躍動化』を通じて、社会を変える。」というビジョンを掲げています。このビジョンには、人財サービス企業から社会変革企業へと進化し、社会をよりよくする価値創出自体を事業として業績を最大化させていきたいという強い想いが込められています。そしてこの経営戦略の根幹にあるのがSDGsです。今回はAdecco Group JapanでSDGs経営を推進し、自らもサステナビリティリーダーとしてグローバルに活躍する小杉山浩太朗さんに、SDGsを根幹に置いたサステナブル経営の実装から浸透、そして取り組みへの想いを聞きました。

今こそ変化を起こす者になろう。SDGsリードとしての第一歩。

SDGsは「Sustainable Development Goals」の略で、2015年9月に国連に加盟するすべて国と地域によって採択された、持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17の目標と169のターゲットから構成され、2030年までに「誰一人取り残さない」社会を実現していくために、多くの国と地域が共に知恵を出し合って作った目標となり、日本語では「持続可能な開発目標」と呼ばれています。
現在、私はAKKODiSを含む日本で事業を展開するAdecco Group のSDGs経営の推進を行っています。私がこの事業に取り組むきっかけになったのは、スイスに本部を置くAdecco Groupが全世界で展開している「CEO for One Month」というグローバルインターンシッププログラムへの参加でした。
その名の通り「1ヶ月間CEOとして働く」というテーマで実施されるインターンシップで、ニューヨーク大学で学んでいた2018年に、Adecco Group Japanの代表でもありAKKODiSの社長でもある川崎健一郎さんと1カ月を共に過ごし、もう一人のCEOとしてマネジメントや経営戦略を学びました。

その後、2019年に世界のユースリーダー代表として国連本部にパネリストとしてご招待いただく機会もあり、卒業後は国際機関で活動することを考えていましたが、新型コロナウイルスの影響で帰国を余儀なくされ、卒業後のプランをすべてキャンセルすることにしました。思いがけない出来事でしたが、自身の歩んでいくキャリアを見つめ直すよいきっかけとなり、そのこと知った川崎さんから「SDGsに代表される社会課題を解決する『社会変革企業』としての存在意義をしっかりと定義し、その創出が事業価値の最大化につながっていくビジネスモデルを作りたい」、そして「その実装と浸透の役割を担って欲しい」と声を掛けてもらいました。
日本で会社員になるというキャリアは考えてもいませんでしたが、大学での学びや国際機関での経験を通し、社会の中で重要な役割を果たす経済をドライブする企業が変わらなければ、社会は変わらないと確信していた私は、「今こそ、その変化を起こす者になろう。」と決心し、ダイバシティ&SDGsリードとして2020年7月にアデコ株式会社(以下、アデコ)へ入社しました。

入社当時、アデコでは2021年から2025年までの中期経営計画を策定している最中でした。私は、AKKODiSをはじめとした各グループ企業の経営者や社員とSDGsを根幹に置いたサステナブル経営の実装についてディスカッションを重ね、半年間かけて5カ年の中期経営計画の策定に取り組み、翌21年から策定した計画を各グループ企業に浸透させるためのアクションを開始しました。
同時に、私自身が一人のサステナビリティに関するリーダーとして、社外や社会に対しての役割を果たすことも重要だと捉え、学生やビジネスリーダー、ビジネスパーソンへの講演活動や上場企業、地方自治体、中小企業、プロスポーツチームへのコンサルティングも積極的に行っています。

Adecco Group Japanの2025年に向けての中期経営計画の概要

折り返し地点を迎えたSDGs。
達成状況は好ましくなく「SDGs疲れ」が起きている。

2023年7月にSDGsは折返し地点を迎えましたが、達成状況は好ましいものではありませんでした。新型コロナウイルスの感染拡大やロシアのウクライナ侵略、気候変動なども要因ではありますが、多くの企業で取り組まれているSDGsが、表面的なアクションに留まりすぎたということがあげられます。
ある専門メディアの調査によると、生活者の6割以上が企業のSDGsに関する情報発信に「飽きや疲れを感じる」という結果も示されています。サステナビリティ、SDGsと過度に謳われているため、生活者に「SDGs疲れ」が起きているのです。これらは、本質的な理解が浅いままSDGsに取り組んでいることと、サステナビリティをビジネスと結びつけられるリーダーが不足しているためと考えられます。
例えば、事業とかけ離れた環境面の話題ばかりに目が向けられた発言では、企業の成長が見えず、経営者の賛同が得られぬまま孤立してしまいます。一方で、ビジネス面ばかりを優先し過ぎて、SDGsを単なる宣伝手段として利用したり、サステナビリティを軽視した取り組みを行うと、SDGsウォッシュ※に陥りやすくなります。SDGsを推進することで、ビジネスにどれほどリターンがあるかを経営者へ定量的に説明することは、サステナブル経営を牽引するリーダーには不可欠です。

SDGsは17個の目標があり3つに分類されると言われています。SDGsウェディングケーキモデルと呼ばれていますが、その構造は極めてシンプルです。1段目に地球環境という大きな土台があり、2段目に社会、3段目に経済と分類され、各段に17個の目標が振り分けられています。

SDGsウェディングケーキモデル(出典:ストックホルムレジリエンスセンター)

「環境課題を解決するためには、社会的なことも考えて、経済も変えていかないといけない」と、全てを繋げて考える必要がありますが、多くの企業が、環境、社会、経済と、点と点でしか取り組めておらず、結果として「あのSDGsは企業の本業とどうつながっているの?」と言われ、生活者は疲れや飽きを感じてしまいます。
環境、社会、経済を理解してSDGsを引っ張っていくのはなかなか難しいことも事実ですが、この3つのバランスを保ちながらサステナビリティとビジネスをうまく結び付けることが、SDGsの活動ではとても重要なこととなります。

※SDGsウォッシュ:英語の「whitewash(ごまかす、うわべを取り繕う)」を組み合わせた造語で、SDGsへの取り組みを行っているように見えて、その実態が伴っていないビジネスを揶揄する言葉。

気付いたらサステナビリティに繋がっていた。
SDGsを実際の行動と関連付けて浸透させる。

SDGsを推進する上で、私自身がとても大切にしているのはさまざまな観点を持つ社内外のステークホルダーとの対話です。社会全体で向かうべき方向と、企業としての目標達成に合った仕組みをどうしたら作られるか、という建設的な議論をして、現実的に企業と社会を変えていくことを考えていきたいからです。ニューヨークに滞在していた頃、有識者の集まりで、あの企業はダメだとか、あの企業が社会を悪くしていると、企業や経営者への批判に明け暮れている場面をよく目にしました。
指摘している内容は間違いではないですが、毎日何億も稼いでいる企業や経営者を目の前にして、「あなたたちの仕事は間違っているから今日からやめていただけますか」と言っても話は聞いてもらえません。批評や批判をするだけではなく、自分として何をするかというアクションを提案し、実際に数字を動かしている人たちと社会を変える道筋を作っていくことが重要です。
現状を大きく変化させることが必要ではなく、いまのレールを進んでいたら、実はその方向がサステナビリティとして目指していた方向と一致していた、という結果論でいいと思っています。
実際に私は、アデコグループの各部門や社員への浸透の際、自分たちの営業成績に繋がる「差別化要因」という観点でサステナブル経営について説明を行いました。すると自社サービスを説明する場面で、他社との差別化ポイントとしてクライアントと商談が行え、成約に繋がったことがありました。もちろん営業メンバーはSDGsを唱えていた訳ではありません。自分たちの役割に取り組んだ結果、それがサステナビリティに繋がっていったのです。

SDGsへ取り組むことで、より働きがいを感じてもらいたい。

イノベーター理論※というマーケティング用語がありますが、この理論はSDGsを推進していく上でもあてはめることができます。サステナブル経営という新しい概念を伝えた時、全ての人が早く反応するわけではなく、保守的になる人もいます。差別化をして自分たちを選ばれる存在にしていきたいからこそ、サステナブル経営がある、ということを、全員が同じスピードではなかなか理解できないと思います。
私も推進活動を行う際には、早く反応して業務に取り込で成果を出したいと思う人とそうでない人には、別々のアプローチやプログラムを用意しました。SDGsを土台にした経営方針や計画を社員にただポンと投げるのではなく、構成要素を分解しながら、それぞれの業務の形に近づけて、その人たちの言葉に翻訳していったことで、働きがいの向上に繋がったという自社アンケートの結果も出ています。サステナブル経営のビジョンと実際の活動内容、そして、自身のビジョンを関連付け、「SDGsを自分ごと化」してもらうことがポイントと言えるでしょう。

※イノベーター理論:何か新しい商品が誕生したときの普及率と時間経過との関係性を示したマーケティング用語。新しい商品やサービスをすぐに使い始めたり、いち早く受け入れて流行を生み出す層(イノベーター、アーリーアダプター)、流行し始めた、もしくは流行したのを見て取り入れる層(アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ)、そして、新しいものへの興味が薄い保守的な層(ラガード)がある。

「世界をより良くしたい」。その想いは北極星のような人生の道しるべ。

ユナイテッド・ワールド・カレッジ(UWC)のカナダ校・ピアソンカレッジの仲間たちと。

私は、小学校3年生の終わりに生死をさまよう大病を患いました。突然訪れた死の危機に怯えていましたが、回復するにつれ、恐怖は生きていることへの喜びと命を繋げてくれた人たちへの感謝に変わっていきました。その頃から「今日世界が終わったとして、後悔せずに一生を終えられるか」という自問を自身にすることが日常となり、しだいに世界のために何か小さなことでもできるようになりたい、「世界をより良くしたい」という人生の志、つまりビジョンとなっていきました。
そして、その想いを実現するため、高校2年生の時に小中高一貫校を退学し、世界80か国以上から各国の代表生徒が集まる全寮制国際学校ユナイテッド・ワールド・カレッジ(UWC)のカナダ校・ピアソンカレッジへ進学。日本代表としてカナダで2年間を過ごしました。ピアソンでは、世界で起こる何かは常に誰かの「自分ごと」でした。仲間の「自分ごと」は私たちにとっても非常に距離の近い出来事となり、世界が直面する課題は、誰かの課題ではなく、自らの課題として主体性を持って解決していくべきであるという責任感をもたらしてくれました。

仕事は仕(つか)える事(こと)と書きますが、皆さんは誰に、何に、仕えているでしょうか?私は仕えるのは自分の志に対してだと思っています。ですから、上司や会社に仕えるための「仕事」をするのではなく、自身の志に仕えるための『志事』をしたいと思っています。時には、理想と現実の差に不安や疲れを感じることもあるかもしれません。理想を達成するために自分ができることはちっぽけに感じることもあるかもしれません。しかし、みんなでビジョン・志を共にし、自分の立場においてどのようにスキルや強みを活かし、社会に小さな影響をもたらすことかを考えて『志事』をしていれば、必ず結果はついてきます。
世界を変えるなんて大そうなことを、と思うかもしれませんが、世界は個体ではなく、人の集合体です。小さなアクションは少しずつ繋がり、世界を変えるドミノ倒しを生み出す原動力になると信じています。
私が立っている位置はゴールに対してはまだ遠いですが、向かっている方向にはいつも北極星が輝いています。

PROFILE

小杉山 浩太朗
Adecco Group Japan
Head of Sustainable Transformation / ESG

サステナビリティ、特にビジネスにおける実装(SX)が専門。米ニューヨーク大学在学時には世界のユースリーダーの代表として国連総会議長から招待を受け、持続可能な開発の実践に関して各国大使と議論を行った。現在は、AKKODiS、そしてAdecco Group全体のSDGs経営実装に加え、自治体・企業に対して、SDGs推進・経営実装のコンサルティングも実施。

BEYOND
―23歳でグローバル企業のSDGs責任者に就任したZ世代リーダーが伝えたいこと―

<本書より>
一人一人が違う立ち位置にいる中で、サステナビリティが体現された世界というものが全く現実離れした馬鹿馬鹿しいものに聞こえることもありうるかもしれません。しかし、その理想を現実にすることこそが、我々の使命なのです。(中略)「当たり前」や「現実」に躊躇しているだけではもう世界がもたなくなるのだということをSDGsは伝えています。
著者:小杉山 浩太朗 発行:東急エージェンシー

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